仕立て屋さん
もう2年も前になるが
初めて博士がシャツをオーダーメードした時のこと。

ガーナでの仕立て屋さんは日本の美容院や歯医者のようだ。
探さなくてもあちこちで目に入ってくる。
しかし、腕と相性の両方がよい仕立て屋さんを見つけるのは
そう簡単ではない。
それもきっと日本の美容院や歯医者と同じだ。

飛び込みで試してみるのも時には楽しいが、
気に入った生地や限られた時間の時は
友人の口コミがあると安心だ。
誰かが格好のいい服を着ていたら、
その人にどこで作ったのか尋ねるのが一番いい。

「かなりごちゃごちゃしたローカルな場所だけど、、、」
そう言いながら教えてもらった仕立て屋さんに
数日後、博士と二人でドキドキしながら向かった。

地元の人たちが「アクラのセンター」と呼ぶ地域。
ひっきりなしにクラクションが鳴らされ、
人もバイクも車もひしめいている。
もはや、どこが車線なのかもよくわからない。
バイクがすれすれに脇をすり抜けていく。
対向車が目の前からやってくる。
仕立て屋さんのあたりに来たが
車を停める場所などどこにも見当たらない。

ずいぶんと離れたところになんとか車を停めて
仕立て屋さんへと歩く。
車の中で感じたあの喧噪も危なく見えた雰囲気も
一歩外に出たとたん、不思議と気にならなくなる。
じぶんもその光景の一部になるのだ。

教えられた通りに
人々で賑わう軽食屋の前で電話をすると
仕立て屋さんが迎えに来てくれた。
彼の後について人をかき分け
軽食屋のわきの細い通路を入っていく。
ちょうど軽食屋の裏が仕事場、そして家だった。
家といっても、奥行きがわずか2、3メートルの細長い部屋。
そこに何人で暮らしているのかわからないが、
割れた窓ガラスをのぞくと大人が一人、中で寝ていた。

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持ってきた生地を渡し、シャツを注文すると
首から下げたメジャーを博士の肩幅や腕にあて
小さなノートに数字を記入した。
私のスカートも頼みたかったが
男性の服しか作らない、とのことだった。

ほんの5分ほどのやりとりだったが、
その手さばきと穏やかな口調、心地よい音のミシンから
長年仕立て屋として生きてきたおじさんの人生の一端が
しずかに溢れ出ていた。

13122271.jpg

3日後
博士念願のシャツ、第一号が出来あがった。



Posted by 船長
category:人   系
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